by standard の分析 の続き。
以前はcogas個人が独自にあーだこーだと言っていました。
しかし最近、xorxesがgismuのjbo定義をどんどん追加しているので、これを見ると解決するのではないか?と思い、続編です。
おさらいとして、こんな感じに分類できましたね:
① 単位的述語(メートル、キログラム、分、秒、非SI単位)・・・ 36語
② 順序性述語 (長い、重い、遅い)・・・ ~36語
③ 境界性述語 (嘘、真実、悪質)・・・ ~36語
④ 血縁述語 (兄、娘)・・・ 3語
大体100語くらいあったわけですが、現時点でjbo定義がないものは、
clite |
linto |
litce |
molro |
nobli |
radno |
stero |
tilju |
xadba |
xampo |
の10単語だけでした。うち、単位系述語が{litce},{molro},{radno},{stero},{xampo}と半分を占めてます。あとは、「軽重」「礼儀正しい」「高潔」「半分」だけですね。いずれできるでしょう。
というわけで、上の①~④の順に見て行きたいとおもいます。
①
まずは単位系。
delno |
gradu |
grake |
jeftu |
kelvo |
masti |
mentu |
mitre |
cacra |
snidu |
基本SI単位系(秒、メートル、カンデラ、(キロ)グラム、ケルビン)、単位(gradu)、時間(秒、分、時、週、月、)の3つに分けられますが、いずれも、"by standard"の位置がjbo定義では消えています。これが「記述不足」なのかどうかはわかりませんが、ひとまずの解答として「気にするな、消してやった」となります。
しかしながら、djedi(日)とnanca(年)だけは、
djedi
x1 se ditcu lo nu mo'e $x_2$ roi mulcarna fa lo plini no'u $x_3$ .i x1 cacra li revo pi'i x2 la terdi
x1(事)は x3(惑星)の x2(数)回の自転に相当する時間; x1(事)は地球でいえば x2(数)× 24時間
nanca
x1 se ditcu lo nu mo'e $x_2$ mulno sruli'u lo se plini fa lo plini no'u $x_3$ .i x1 djedi li 365.25 pi'i x2 la terdi
x1(事)は x3(惑星)の x2(数)回の公転に相当する時間; x1(事)は地球でいえば x2(数)× 365.25日
となっており、djedi を 「惑星が1自転するのにかかる時間」、nancaを「惑星が1公転するのにかかる時間」として再定義し、その基準を「想定している惑星」としています。
(個人的には、太陽年にしてしまって、365.2422倍にしたほうがいいんじゃないかと思います。実際、現代の世界のスタンダードであろう太陽暦はグレゴリオ暦で、これは1年を365.2425日としていますし)
ちなみに他の月・週・時・分・秒について見てみると、
masti
x1 se ditcu lo nu $x_2$ se rapli lo nu lo lunra cu mulno sruli'u lo terdi .i x1 cu djedi li 30 pi'i x2 gi'a jeftu li 4 pi'i x2 gi'a nanca li x2 fe'i 12
x1(事)は 主要衛星(月)が惑星(地球)の周りを x2(数)回公転するのに相当する時間; x1(事)は x2 × 30 日間、または x2 × 4 週間、または x2 / 12 年
jeftu
x1 djedi li 7 pi'i x2
x1(事)は x2 × 7 日間
cacra
x1 klani x2 lo ka lo xo kau boi fi'u re vo si'e be lo djedi cu ditcu ke'a
x1(事)は x2(数)/ 24 日間
mentu
x1 klani x2 lo ka lo xo kau boi fi'u xa no si'e be lo cacra cu ditcu ke'a
x1(事)は x2(数)/ 60 時間
snidu
x1 klani $x_2$ lo ka lo xo kau boi fi'u xa no si'e be lo mentu cu ditcu ke'a .i x1 klani x2 lo sornai rauci'e ni ditcu
x1(事)は x2(数)/ 60 分間; x1 はSI単位系の時間量でいうと x2(数)の量
となっており、sniduにはSI単位系についての言及、mentuは時間から、cacraとjeftuは日間からその意味が得られ、mastiは主要衛星と惑星の関係で定義されています。
いずれにせよ、SI基本単位系についてはSI単位系を参照、djedi, masti, nanca については惑星/主要衛星の公転/自転を参照せよとなっています。
では、"by standard"は一体何を想定していたのかという話ですが、恐らく、「参照する惑星」や「参照する単位系」だったんでしょう。
jeftu, cacra, mentu, snidu に関しては、惑星の自転(djedi)から意味が得られているわけですから、もし"by standard"を復活させようと思うのであれば、それぞれの定義文のdjedi3(すなわち惑星種)を x3 として採用すればよいかと思います。
masti も同様に x3 に惑星種を指定してやればよいかと思いますが、主要衛星が2つあったり(ツートップ的な意味で)すると、衛星種を指定する x4 も必要な気もします。ちなみに、水星と金星には衛星がないそうですね。
「別の単位系を使うときはどうすれば?」と思うかもしれません。つまり、「sniduやmitreやgraduをSI単位系だけでなく、その上位概念的なものとして定義して、x3で単位系を指示する」というアイデアもあるかと思いますが、そもそも、英語定義の頃から、これらは metric unit です。すなわち、非metric unit のために x3 を用意する必要はなく、ロジバンはその代わりに「土着的単位」のためのgismuを用意しています。
minli
x1 noi na'o clani tersei cu klani x2 lo ni clani kei ma'i x3
x1 は x3(観点; ma'i)でいうと、長さにして x2(数)だ(ふつう、長めの単位)
gutci
x1 noi na'o tordu tersei cu klani x2 lo ni clani kei ma'i x3
x1 は x3(観点; ma'i)でいうと、長さにして x2(数)だ(ふつう、短めの単位)
dekpu
x1 klani x2 lo ni canlu kei ma'i x3
x1 は x3(観点; ma'i)でいうと、体積にして x2(数)だ
bunda(非メートル的重さ)がまだ定義されてませんが、{tilju}{linto}がまだなので、さもありなん。
④
次に飛びますが、簡単な血縁述語を見ていきます。
兄弟、姉妹の2つですが、この"by standard"は tunba3 に等しく、
tunba
x_1 is a sibling of x_2 by bond/tie/standard/parent(s) x_3.
さらにこれは、dunli3
dunli
x_1 は x_2 と x_3 (性質)に関して同等
と等しいとされていますから、血縁述語の "by standard" は 「(ka)な位置」と言えるでしょう。
つまり、「どういう点で兄弟(姉妹)なのか」というのを表しているわけですね。
また、lanzu3 は ckinysi'u2 と同じ、つまり、やはり「どんな関係で家族なのか」を指定します。
②③
とりあえずこれら:
banli | 偉大 |
cafne | 頻発 |
certu | ベテラン |
cinse | 性的 |
citno | 若い |
clira | 早い |
cnino | 新しい |
drani | 正しい |
glare | 熱い |
jinsa | 清い |
jmive | 生きている |
kanro | 健康だ |
kargu | 高級 |
laldo | 古い |
lenku | 冷たい |
lerci | 遅い |
mulno | 完全 |
nanla | 息子 |
nixli | 娘 |
panra | 対応的 |
plana | 太っている |
pluja | 複雑 |
ruble | 弱い |
slabu | 馴染みある |
srera | 間違っている |
tsali | 強い |
verba | 子ども |
virnu | 勇敢 |
vitno | 永久 |
xamgu | 良い |
xlali | 悪い |
zasni | 一時的 |
dizlo | 低い |
galtu | 高い |
については、
"by standard"の位置が消えています。ラッキーなことにほぼすべて「わけわからん」やつだったので、こちとら大歓迎です。
では、"by standard" が無事残っているのは…?というと、大きくわけてやはり2つです。
1つ目:cnano3(標準/平均/スタンダードのための集合/群れ)
barda | 大きい |
caxno | 浅い |
cinla | 薄い |
clani | 長い |
cmalu | 小さい |
condi | 深い |
ganra | 広い |
jarki | 狭い |
tordu | 短い |
rotsu | 厚い |
これらの"by standard"の位置は cnano3 が入ります。つまり、「大小」「浅深」「細長」「広狭」「薄厚」というのは「より~だ」という意味であり、「ある集団の中で平均より上だ」ということになります。
ちなみに、これらはすべて{barda}{cmalu}に還元されます。caxnoとcondi以外は、
x1 barda/cmalu x2 noi XXX cimde x1 ku'o x3
という形式です。一応見てみると、
clani/tordu
x1 barda/cmalu x2 noi brarai cimde x1 ku'o x3 (最大量の次元)
rotsu/cinla
x1 barda/cmalu x2 noi cmarai cimde x1 ku'o x3 (最小量の次元)
ganra/jarki
x1 barda/cmalu x2 noi remoi cimde x1 ku'o x3 (2次元)
となっています。あとの2つは、
condi/caxno
x1 barda/cmalu x_2 noi farna x1 boi x3 ku'o x4
です。
残り13語、
cladu | うるさい |
smaji | 静か |
jetnu | 真 |
jitfa | 偽 |
mintu | 同種 |
drata | 別種 |
racli | 理性的 |
fenki | 狂った |
vrude | 美徳 |
palci | 悪質 |
juxre | 不器用 |
melbi | 美しい |
dukse | 過剰 |
については、まちまちなので1つずつ見ていきます。
cladu
x1 tsali le ka ka'e se tirna bu'u x2 kei x3
smaji
x1 seltinynalka'e lo'e zvati be $x_2$ ma'i $x_3$ .i x1 se sance no da
「うるさい」「静か」の対をなすはずですが、定義文はあまりそう見えない。
問題は x3 なんですが、 cladu では tsali3 が、 smaji では ma'i = manri1 となっています。
しかしながら、 tsali3 は現行の定義では消えてるんですよね。
そうなると、smaji の定義をあてにして、ここでいう "by standard" は「観点」となりそうです。
jetnu
x1 mapti lo fatci lo ka ce'u ve skicu ce'u fo $x_2$ .i x1 to'e jitfa x2
jitfa
x1 na mapti lo fatci lo ka ce'u ve skicu ce'u fo $x_2$ .i x1 to'e jetnu x2
これも「真偽」の対です。 {lo ka ce'u ve skicu ce'u fo x2} が少し読みにくいですが、
skicu
x1 (者)は x2 (物/事/状態)を x3 (者)に x4 (表現/文字列)によって描写/叙述する
を見ると、直訳は
「x1 と 事実は 「x2 は Y を zo'e に X によって叙述する」という関係を満たす」
くらいの意味になります。意訳すれば、「x1はx2にとって真実/嘘である」で、jinvi/senpi とそんな変わらないような気がしますね。jbo定義的には "by standard" は skicu1 ですが、ニアリーイコール manri1 でしょう。なので、これも「観点」と訳せそうです。現行の「認識体系」でも十分でしょう。
mintu
x1 dunli $x_2$ lo ka ce'u du makau ma'i $x_3$ i x1 to'e drata $x_2$ boi $x_3$ i x1 joi x2 simxu lo ka ce'u ce'u basti x3
drata
x1 frica $x_2$ lo ka ce'u du makau ma'i $x_3$ i x1 to'e mintu x2 boi x3
mintuの方だけ追加で1文ありますが、それは置いといて。見るからに ma'i = manri1 の意味ですね。つまり、"by standard" は「観点」です。
racli
x1 sarxe lo se zanru be lo kanro menli kei $x_2$ .i lo nu x1 ckaji ja zukte x2 cu zabna lo ka se krinu ma kau
fenki
x1 to'e racli $x_2$ .i x1 kalsa lo ka zukte $x_2$ .i lo nu x1 cinmo x2 cu vlile
この2つはjboとengで意味が変わっています。x1が元は「行為・行動」だったのですが、jbo定義では「人」になっています。
sarxe は {x1 ckini x2 x3 ja'e lo zabna ja pluka ja melbi ja to'e vlile} という意味で、意訳すれば「x1 は x2 と x3(関係)で繋がりがあり、その結果、イイ感じなことが起こる」くらいですね。
結果として、racli2 = sarxe3 = ckini3 なので、 ここの"by standard" は「(関係)」です。しかし、次の定義文では ckaji2 か zukte2 であり、「(性質・事)」です。ここでも x1 は「(者)」となっていて、「x1がx2(事・性質)をする/であるのは、何らかの正当な理由があるという点でイイ感じだ」と、訳が悪いのでざっくりですが、おおよそそんな感じです。
fenkiについても x1 は行動から者に変更されていて、x2 は zukte2 となっていますね。
vrude
x1 zabna $x_2$ ma'i lo marde .i x1 to'e palci x2
palci
x1 mabla $x_2$ ma'i lo marde .i x1 to'e vrude x2
zabna/mabla はそれぞれ、
x1 xamgu ja trina ja melbi ja pluka ja mansa fi $x_2$ fe $x_3$ .i x1 to'e mabla x2 x3
x1 xlali ja rigni ja fegli ja to'e pluka ja na'e mansa fi $x_2$ fe $x_3$ .i x1 to'e zabna x2 x3
なので、ここでの "by standard" は結構幅があります。xamgu3, trina3, melbi3, pluka3, mansa3 のいずれか、 xlali3, rigni3, fegli3 のいずれかですから。「(性質・者)」くらいでしょうか。
(実は、xamgu, xlali, pluka, rigni は x3 が消えてるんですよね)
juxre
x1 zukte ja ckaji x2 gi'e claxu lo ka certu ja stati x2 gi'a melbi fi x2
これは(事・性質)ですね。
melbi
x1 jai pluka x2 fai x3
これについては、審美基準 x4 は消えています
dukse
x1 zmadu lo banzu $x_2$ ma'i $x_3$ .i x1 zmadu lo mansa be $x_3$ bei x2
見るからに manri1 ですから、これは「(観点)」です。
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消えた by standard は一体なんだったのか、という話ですが、おそらく、manri1 でしょう。manri1 の位置を付け足すためには ma'i を使えばいいわけで、PSに標準で余程のことがない限り用意する必要はないのでは、ということかもしれません。少なくとも消えた「基準」が cnano3 であることはないでしょう。それが分かっただけでも個人的には万々歳です。
「基準」位置は、大別すると、cnano3, manri1, ckaji2, zukte2 の4つに分けられそうです(時間述語はまた別ですが)。
cnano3 は barda/cmalu 由来で、「(比較群)の平均より」という意味
manri1 は 「(観点)から/においては」という意味
ckaji2 は 「(性質)という点で」 か 「(関係)という点で」という意味
zukte2 は 「(事)をするという点で」 という意味
に解釈できそうです。jbo定義で消失したものについては恐らくすべて manri1 だと思われます。
これでひとまず "by standard" の意味がすべて解決したことになります。
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最後に、消失した"by standard" は本当に消してしまってよいのかという話を。たとえば、{glare}は「熱い」ということですが、「誰にとって熱いか」を明示しない限り、命題としては不十分な気もします。
しかしこれはコンテキストを見逃しているとも言えます。誰かが {glare} と叫べば、「誰にとって熱いか」というのは一目瞭然でしょう。xorxesはおそらく、「観点がないなら、それは話者の視点だ」ということを考えているのではないかと思います。
まあでも、多分、ma'i を付け足した定義にすればいいんじゃないかとも思います。
ma'i項の有無はまだ発展途上なので、今後変わる部分かなとも思います。とりあえず、"by standard"がcnano3とmanri1のどちらなのかという当初の問いに対してある程度明確な答えが用意されたのは大きいですね。